「論語と算盤」渋沢栄一
（👆つづきです）
だからわたしは、青年に対してひたすら人格を磨くことを進めるのだ。青年というのは真面目で素直なものだし、しかも活力が体中にあふれて、それが外にまで盛んに漏れ出している。そんな力を活かしてどんな脅しや圧力にも負けないような人格を養成し、やがては自分を経済的に豊かにするとともに、国家の力や豊かさを増すよう努力する必要があるのだ。信じる対象が定まらない青年は、危険が多い分、自分も慎重に振る舞わなければならない。
さて、人格を磨くための方法や工夫は色々とある。仏教に信仰を求めるのもいいだろうし、キリスト教から信念を汲み出すのも一つの方法だろう。この点わたしは、青年時代から儒教に志してきた。その始祖に当たる孔子や孟子といった思想家はわたしにとって生涯の師である。だから、彼らのとなえた
「忠」良心的であること
「信」信頼されること
「孝弟」親や年長者をうやまうこと
などを重視するのは、とても権威のある人格の養生法だと信じている。要するに、忠信孝弟を重視するのは、
「仁」物事を健やかに育む
という最高の道徳を身につけるために、また、社会に生きていくうえで欠かせない条件なのだ。
(Kazu)
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